こぶたの手帖

会社員のこぶた(♀)が習慣化をやって人生を変える過程です。

後日談よりも衝撃の解説にやられる 「明日の子供だち」

どうも、こぶたです

今日は、昨日購入して読み切った、

有川浩 改め、 有川ひろ さんの

明日の子供たち をご紹介する。

 

 

明日の子供たち (幻冬舎文庫)

明日の子供たち (幻冬舎文庫)

  • 作者:有川 浩
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: 文庫
 

 

世間に知られていない児童養護施設

舞台は、とある児童養護施設。

そこで過ごす、子供達と、

勤める職員が主人公の視点を交代していく。

 

さて、皆さんは

児童養護施設と聞いて、

何を思い浮かべるだろうか。

 

親に虐待された子供、

頼れる親戚や家族が居なくなってしまった子供、

安心できるはずの家にいることで、命の危険にさらされる子供、

 

様々な理由のある子供たちが、

児童養護施設で過ごしている。

 

作中には、

何度も

 

かわいそうと言わないでほしい

 

という言葉が何度も出てくる。

 

でも、実情を何も知らない私たちは、

どうしても、

  • 頼れる親がいなくてかわいそう
  • 虐待されてかわいそう
  • 帰る家がなくてかわいそう

と無責任に思ってしまう。

 

そんな私たちに、

この小説は

 

 

児童養護施設で暮らす自分たちの正しい実情を知ってくれ!

いろいろな葛藤と、思いを知ってくれ!

 

と強く、訴えてくる。

 

 

やっちゃってるやん、な新米職員

物語の最初に出て来る、

ポジティブでやる気に満ち溢れた新米職員。

 

その空回り感が、青臭く痛々しい。

早速初日に、

「かわいそうな子供達の支えになりたい」

と直接子供に言ってしまい、

がっつり壁を作られる。

 

いやいやいや、そりゃそうやろ!何言ってんの!

って読んでいる側は思うけど、

有川作品によく出て来る、

空気が読めない馬鹿ポジティブなこの職員がいることで、

その先に直面する

様々な事態が好転していくことになる。

 

この作品は、章ごとに、視点が変わっていく。

この馬鹿ポジティブな職員に始まり、

堅物な同僚(女)、……この構図、有川作品では馴染みですよね

堅物同僚の師となるベテラン同僚、

とにかく厳しい上司にとにかく優しい施設長、

など、職員の過去や職員の裏の考えを視点を変えながら読んでいくことで、

どの人にも感情移入しながらも、

児童養護施設を取り巻く現状を知ることができるようになっている。

 

「問題ない子」たちの紡ぐ言葉たち

描かれるのは、

もちろん職員だけではない。

 

当事者である子供達にもスポットが当たる。

主に高校生である当事者の女の子と男の子の

将来への不安や、

何も知らない世間や大人への思いを訴えてくる。

 

途中に彼女がいう、

 

施設にいる子供は別に親に捨てられたわけじゃないんです

子供を育てる能力がない親の元に生まれてしまったことがかわいそうというのならそれはたしかにそのとおり

育てる能力がなかった親のほうを惨めだと思います

親としての能力がないって烙印を押されたわけなので

 

という言葉には圧倒された

 

もちろん、こんなふうに思えない子供もたくさんいるだろう。

なぜ自分ばかり、と境遇を恨むこともあるだろうと思う。

 

老成した男の子が、幼い頃に本を読むことを勧められて、

なぜ本を読むべきなのか、

の話を施設長とする章も印象的だ。

 

本は、経験していない人生について教えてもらえるだけではなく、

本をよみ、想像力を養うことは、

「虐待の連鎖」を断ち切ることになる、という施設長の言葉に、

自分自身も、もっともっと読書をしようと思わせてもらった。

 

最後の最後でしてやられる解説

さて、物語が終盤になっていくにつれて、

もう終わっちゃう、

まだこの物語の中の人たちのことを知りたいのに、

この後どうなるの、

終わらないでよ、

という思いになっていく。

 

そしてあっさりと、

Fin.という文字が書かれ終わる。

 

しかし、この本の真骨頂は、

この後、後書きとしての解説にあると思う。

 

してやられた。

まんまと。

 

みごとな小説だと思う。

 

ぜひ、

本を手に取って、

この感覚を皆さんも感じて欲しいと思う。

 

 

500ページを超える長編だが、

数時間で一気に読み終えることのできる小説だ。

これからを担う子供達が安心して暮らしていける社会を作るために、

無関心でいてはいけない分野だと、思う。

 

 

おしまい